パワハラ対策が法律上義務化、パワハラの定義とは?

仕事をしている男性

パワハラ対策義務化の背景

2019年6月26日に厚生労働省から「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

この内容で特徴的なのは、「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が過去最高となり、相談件数に占める割合の1/4にのぼったことです。これは2番目に多い「自己都合退職」の約2倍となっています。※

※ 平成30年度 民事上の個別労働紛争相談件数計323,481件のうち、「いじめ・嫌がらせ」は82,797件、「自己都合退職」41,258件

このような「いじめ・嫌がらせ」に関する問題が社会問題化してきたことから、2019年5月29日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(旧雇用対策法)」が改正され、パワーハラスメント(以下、パワハラ)防止のための雇用管理上の措置を事業主に義務付けることになりました。

パワハラの定義

今回の制定では具体的に「パワハラ」を以下の3つの要素とし、企業に対してパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)を設けました。

  1. 優越的な関係を背景に
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  3. 就業環境を害する

なお、相談体制の整備など具体的内容や該当する事例などは今後の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論し指針で定めることとなっています。

パワハラの判断基準

厚生労働省が有識者や労使の委員によって設置した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」(以下円卓会議)で判例等の分析を踏まえパワハラ行為の「6つの行為類型」が示され、この6類型に前述の①から③の3つの要素がすべて当てはまる場合にパワハラとして認められる、という判断基準が示されています。

パワハラ6つの行為類型

身体的な攻撃暴行、殺傷
精神的な攻撃脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言
人間関係からの切り離し隔離、仲間外し、無視
過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
過小な要求業務上の合理性がなく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない
個の侵害私的なことに過度に立ち入る

義務化の開始時期

パワハラ対策の義務化は大企業では2020年4月にスタートします。中小企業は同時期に努力義務でスタートしその後2年以内に義務化される見通しです。

ただし、今回の法改正では、パワハラは「適正な指導との境界が曖昧だ」との企業側の主張を考慮し、罰則を伴う行為自体の禁止規定は見送られています。

  • 大企業は2020年4月スタート
  • 中小企業は同時期に努力義務でスタートしその後2年以内に義務化される見通し
  • 罰則を伴う行為自体の禁止規定は見送られている

就業規則への明文化を

就業規則を変更しているイメージ

厚生労働省ではパワハラ防止の取り組みの枠組みの1つに、就業規則などにパワハラ防止を明文化し、懲戒規程も定め正しく運用することを推奨しています。また、その規程の存在や相談窓口の存在を従業員に周知することも示されています。

就業規則への明文化だけでなく、「ガイドライン」や「パワハラ防止宣言」など自社にとって効果的な対策を早期に講じることにより、問題を未然に防ぐ取り組みが重要ではないでしょうか。

著者:植松 隆史
社会保険労務士法人KiteRa 代表社員